土地開発公社の解散と清算手続きの終了について
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あきる野市土地開発公社(以下「公社」)は、市議会の議決及び東京都知事の認可を経て、平成28年1月に解散し、5月末をもって所定の清算手続が全て終了しました。
ここでは、公社がこれまで果たしてきた役割、公社の解散及び清算結了までの経緯などについてお知らせします。
公社の概要
公社は、公有地の拡大の推進に関する法律(昭和47年法律第66号。以下「公拡法」)第10条に基づき、昭和48年7月に「公共用地、公用地等の取得、管理、処分等を行うことにより、地域の秩序ある整備と市民福祉の増進に寄与すること」を目的に設立されました。
・沿革
昭和48年7月 秋川市土地開発公社 設立
昭和59年2月 五日市町土地開発公社 設立
平成 7年9月 秋川市、五日市町の合併により、あきる野市(以下「市」)が誕生し、あきる野市土地開発公社となる。
・事業内容
公有地等先行取得事業(後年度に市が取得)及び土地造成事業(菅生テクノヒルズ開発整備事業、西地区開発整備事業)
公有地等先行取得事業のしくみ
- 市は、公社に対し、公共施設の整備などの事業に必要な土地の先行取得依頼(図1➀)をします。
- 公社は、依頼に基づき、土地所有者から土地を取得(図1➁)します。
- 公社は、市の債務保証を受けて、金融機関から借入(図1➂)を行い、土地所有者に取得費の支払(図1➃)をします。
- 市は、事業実施が決まった段階で、公社に対し取得(買戻)依頼(図1➄)をします。
- 公社は、市へ土地の売却(図1➅)を行い、市の支払(図1➆)をもとに、金融機関に借入金の償還(図1➇)をします。
図1 公有地等先行取得事業のしくみ
公社が設立された昭和48年当時の土地の価格は、昭和30年当時と比較して首都圏では土地の価格が24倍にまで高騰していました。また、この価格の上昇は、オイルショックの一時期を除いてバブル景気崩壊の平成3年まで続きます。 市は、まちづくりの事業を行うに当たり、用地を取得しますが多額の予算が必要となるため、起債 (借金) を活用することになります。起債は、事業実施が見込まれる場合でなければできないことから、土地の価格が安いうちに公社が先行取得し、事業の実施が可能となった時点で市が買い戻し、事業費の負担の抑制を図るものです。 |
公社が果たしてきた役割
公社は、市からの公共用地の先行取得依頼に基づき、累計で約100haの土地の取得を行うとともに、事業計画の進捗に併せて市に売却するなど、迅速かつ柔軟に対応することで、市の計画的なまちづくりに大きく貢献してきました。また、地価が高騰していた時期には、市民負担の抑制の面からも大きな役割を果たしてきました。
公社が実施した主な事業は、企業誘致としての西地区開発整備事業用地、市の中心市街地である西秋留駅(現秋川駅)北口開発用地、秋川渓谷の玄関口である武蔵五日市駅の土地区画整理事業用地、大規模工業団地としての小峰工業団地用地、菅生テクノヒルズ開発整備事業用地の先行取得などがあります。
最近では、先行取得した工場アパート用地及び公共施設の統合整備等の用地を平成24年度に市が買い戻し、市営住宅の草花公園タウンの用地として活用しています。
名称 | 取得年度 | 面積 |
---|---|---|
市立中央公園用地(現:市民運動広場) | S48 | 14,661.00 |
市立中央市民広場用地(現:市民運動広場) | S48 | 17,514.00 |
市民センター用地(現:秋川体育館、中央公民館) | S48 | 12,000.00 |
交通公園用地(現:秋川ふれあいセンター) | S50 | 10,636.00 |
市立草花公園用地(現:あきる野市民プール、あきる野市民球場) | S54、S56 | 54,098.43 |
仮称 秋川市立第4中学校用地(現:御堂中学校) | S56、S57 | 30,717.60 |
西秋留駅北口開発用地(現:秋川駅北口地区) | S56~S58、S61 | 8,673.57 |
菅生インダストリアルパーク用地(現:ダイハツ東京販売(株)に賃貸借、郷土の恵みの森) | S58、S62、S63、H2、H15 | 128,851.00 |
小峰工業団地用地 | S59、S60、S62、S63 | 129,951.33 |
建設省直轄河川改修事業多摩川玉見ヶ崎築堤工事用地 | S60、H1 | 12,600.99 |
菅生テクノヒルズ開発整備事業用地(現:菅生学園) | S62~H3、H5、H9 | 216,987.16 |
西地区開発整備事業用地(現:大和ハウス工業(株)) | H1~H7、H9、H13 | 130,345.74 |
芸術文化村建設予定地(現:郷土の恵みの森) | H2 | 10,006.00 |
秋多都市計画道路 | S60~H12 | 5,182.02 |
緑の保全用地(現:菅生若宮子ども体験の森) | H3 | 29,227.00 |
武蔵五日市駅土地区画整理事業用地 | H3~H6 | 793.76 |
歴史と文化の森事業用地(現:郷土の恵みの森づくり事業用地) | H4、H6 | 5,232.44 |
庁舎用地(あきる野市役所本庁舎) | H7、H8 | 9,852.38 |
郷土館用地(現:五日市郷土館) | H7 | 447.15 |
総合運動場用地(現:山田グラウンド) | H7 | 1,676.48 |
秋3・5・2号線整備に伴う代替地(現:五日市ファインプラザ防災多目的広場) | H7 | 2,189.94 |
工場アパート用地及び公共施設の統合整備等の用地(現:草花公園タウン) | H9~H11 | 13,212.12 |
五日市ファインプラザ外来者駐車場用地(現:五日市ファインプラザ駐車場) | H10 | 2,312.33 |
秋川キララホール外来者駐車場用地(現:中央図書館駐車場) | H10 | 2,010.00 |
秋川駅南口市民運動広場用地(現:油平クラブハウス) | H11 | 2,975.20 |
経済情勢の変化
バブル崩壊後の長引く景気低迷の影響により、地価は平成3年を頂点として下落傾向となったため、公社の主要事業である土地の先行取得については必要性が薄れ、公社は、一定の役割を終えた状態となりました。また、市税の減収などによる市の厳しい財政状況の中で、過去に取得した公社保有土地の買戻しが遅れたため簿価(※1)が累増し、時価との価格差が拡大しました。
市では、第二次「土地開発公社の経営の健全化に関する計画」に基づき、公社に対し、運営費の一部として合計約7.4億円の補助金を支出しました。公社が解散しない場合、補助金の支出を継続することとなり、市の財政に与える影響は大きく、公社のできるだけ早い清算が望まれていました。 |
経営健全化の取組
平成8年頃から全国の土地開発公社を含む第三セクターの経営破綻が続き、公社の経営が問題視されるようになりました。
このような中、公社の簿価残高は、合併当時の平成7年度末には233.5億円でしたが、企業への売却などを進め、平成12年度末には132.3億円となりました。
その後、平成13年6月に国の「土地開発公社経営健全化対策」に基づく「公社経営健全化団体」の指定を受け、第一次健全化計画(平成13年度~平成17年度)を策定し、供用済土地の買戻しや民間売却による簿価の縮減に取り組み、計画期間終了時の平成17年度末の簿価残高は、88.5億円となりました。
しかし、公社の経営状況は、依然として厳しい状況にあったことから、再度、平成18年6月に国の指定を受け、第二次健全化計画(平成18年度~平成22年度)を策定し、簿価縮減の取組を行い、平成22年度末の簿価残高は、43.2億円となりました。
また、平成22年度で第二次健全化計画の計画期間が終了するに当たり、公社の更なる経営健全化を推進するため、庁内で組織した「あきる野市土地開発公社経営健全化推進検討委員会」が今後の取組について検討を行い、検討結果報告書を取りまとめた中で、「市は、第三次経営健全化計画を策定する。策定に当たっては、公社の解散を前提に進めるものとする。」としたことを受け、平成23年度から市が独自に第三次健全化計画を策定しました。その取組の結果、平成26年度末の簿価残高は、約18億円となりました。
解散に向けての三セク債の活用
国は、全国的な第三セクターや地方公社の経営悪化の問題を踏まえ、抜本的改革の促進について集中的かつ積極的な取組を要請するとともに、平成25年度を発行期限とする第三セクター等改革推進債(※2、以下「三セク債」)を創設しました。抜本的改革の進捗状況から(平成25年度までに196団体が三セク債を活用)、国は、三セク債が起債可能な期限を平成28年度まで延長しました。
市では、後年度の財政負担を平準化できること、また、長期的に見て市の財政負担を減らすことができ、早い段階で公社を解散すれば、公社による借入金に係る利息の累増なども発生しないことから、将来負担を抑制し、公社の早期解散を確実に実行できる方策として、三セク債を発行することとしました。
※2 第三セクター等改革推進債 地方自治体が土地開発公社を含む第三セクター等の廃止を含めた抜本的改革を推進するため、国に特別に認められた地方債。
公社の解散と清算手続
平成27年3月市議会定例会において「土地開発公社の解散について」及び「第三セクター等改革推進債の起債に係る許可の申請について」の議案が議決され、解散に向けた手続きに入りました。
- 東京都に三セク債の発行許可申請を行い、平成27年 9月2日付けで発行許可(図2➀)を受けました。
- 平成27年10月8日に市の買戻し履行義務を消滅させ、公社の債務を確定させるため、先行取得契約の解除(図2➁)を行いました。
- 平成27年10月9日に三セク債を発行(図2➂)し、金融機関に対する公社が抱える17.9億円の債務を、同日付けで市が代位弁済(※3)(図2➃)しました。
- 市は、公社に代わって債務の弁済を行うことにより、公社に対して負担した17.9億円の返還を求める(図2➄)ことになりますが、金銭を持たない公社からは保有する土地による代物弁済(※4)(図2➅)を受けました。
- 簿価と代物弁済を受けた土地の時価には開きがあり、なお約9.5億円の差額が生じました。市は、不足する債権を放棄(図2➆)するため、平成27年12月市議会定例会に「権利の放棄について」の議案を提案し、議決されました。
※3 代位弁済 債務者(公社)以外の者(市)が債権を弁済すること。弁済者(市)は、債務者(公社)に対して求償権(請求する権利)を取得する。
※4 代物弁済 本来の債務の履行(金銭による弁済)をする代わりに物(土地)により弁済を行うこと。
図2 公社の解散と清算手続の流れ
権利の放棄については、市が独自に策定した第三次経営健全化計画の中で、「公社の解散を前提に進めるものとする。」としており、権利の放棄をしないで債務の弁済を公社に求めても、支払い能力のない公社は、債務を抱えたまま残り、清算(解散)ができない状況が続いてしまうことから、行うものです。 債権放棄の額は、土地を取得した時に比べ土地の評価が下がってしまったために生じた「評価損」です。この「評価損」は、市が直接土地を取得して事業を実施したとしても同様に発生するものです。また、市や公社が取得した土地は道路や公共施設の整備などに活用するためのものであり、土地の評価が下がっても事業効果そのものに影響があるわけではありません。 債権放棄は、公社を解散するための一連の事務手続きであり、新たに損失が生じるものではありません。 | ||||||||
- 公社の債務が解消されたことにより、東京都に公社解散の認可申請を行い、平成28年1月18日付けで解散が認可されました。
- 公社に対する債権の有無を確定させるため、平成28年2月15日、22日及び29日の3回にわたり、官報に解散公告を掲載しました。
- 債権の申し出がなかったことで、清算を行い、平成28年5月13日に残余財産(現金2,476万1,926円)を市に引き継ぎ、公社の清算手続が、全て結了しました。
今後の取組
今後、市は、公社から代物弁済を受けた土地(下表参照)を早期に売却し、その収入を三セク債の償還(返済)に充てることにより、市の財政負担の軽減を図ります。
資産区分 | 面積 (平方メートル) | 簿価 (千円) | |
---|---|---|---|
1 | 増戸地区面整備事業用地取得事業(森ノ下自治会館南側) | 350.7 | 62,004 |
2 | 増戸地区面整備事業用地取得事業(ファインプラザ北のうち西側) | 1,091.34 | 140,641 |
3 | 増戸地区面整備事業用地取得事業(ファインプラザ北のうち東側) | 301.13 | 49,816 |
4 | 増戸地区面整備事業用地取得事業(ファインプラザ西側臨時駐車場) | 636.91 | 170,644 |
5 | 秋3・5・2号線用地取得に伴う代替地取得事業(武蔵増戸駅北側、三内神社前) | 1,225.98 | 51,517 |
6 | 秋3・5・2号線用地取得事業(横沢地区) | 490.39 | 76,596 |
7 | 秋3・5・2号線用地取得に伴う代替地取得事業(武蔵増戸駅北側) | 206.22 | 43,683 |
8 | 秋3・5・2号線用地取得に伴う代替地取得事業(ファインプラザ西側臨時駐車場) | 856.46 | 268,269 |
9 | 公共施設用地取得事業(牛沼地内初雁地区) | 3,937.54 | 317,132 |
10 | 公共施設用地取得事業(秋川駅北口地区) | 397.6 | 104,145 |
11 | 秋川駅南口土地区画整理事業用地取得事業 | 817.01 | 202,770 |
12 | 建設資材置場用地取得事業(代継地区) | 2,715.00 | 189,842 |
13 | 都市計画道路用地取得事業(秋3・4・5及び3・4・16号線、平沢地内) | 396 | 43,417 |
14 | 公共用地等の取得に伴う代替地取得事業(森山地区) | 415.86 | 78,690 |
合計 | 13,838.14 | 1,799,166 |
最後に
公社は、高度経済成長期を背景として地価が高騰していた時代には、公共施設の整備などに大きな役割を果たしてきましたが、バブル経済崩壊に伴う景気低迷、地価の下落により、それまでの役割は薄れ、経営状況が厳しいものとなりました。
市は、公社の経営状況の改善に向けた抜本的な対策を講じたものの、公社に先行取得依頼した土地の中には、一部で事業化に至らなかった土地もありました。
今後は、これを教訓として、市有財産を重要な経営資産として捉え、不用財産の処分を進めるとともに、公共施設等総合管理計画を基に「保有する財産」から「利活用する財産」への転換を効率的に進めるなど、更なる行政改革を推進し、市民サービスの一層の向上に努めます。
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